あんだんて ~ 2020年2月公演 曲目紹介 ~

 2020年2月15日(土)の公演プログラムは、ヴァイオリン協奏曲とバレエ音楽の2曲です。

べートーヴェンによるクラシカルで重厚な響きのある曲と、もともと舞台芸術のバレエ音楽として作られた華やかでキラキラした印象の曲・・・という全くタイプの違う音楽の組み合わせとなっています。


 1曲目は、ソリストとオーケストラが共演するヴァイオリン協奏曲です。

 2020年は、ベートーヴェン生誕250年の年であり、世界各地で彼の曲が演奏されることでしょう。

 ベートーヴェンは、1770年に現在のドイツのボンに生まれました。17歳の時に、ウィーンにてモーツァルトと面会したり、20歳過ぎのころにはハイドンとも交流があったようです。みなさんご存知のように、彼は20歳代後半より難聴になり、28歳頃にはほとんど聴こえなくなりました。音楽家として聴覚を失うという死にも等しい絶望感から、1802年には『ハイリゲンシュタットの遺書』をしたためて自殺を考えましたが、彼自身の芸術(音楽)への強い情熱をもってこの絶望的状態から蘇りました。彼は「音楽で世界を平和にする」ということを真剣に考えていました。

 1804年からの10年間は交響曲第3番(英雄)をはじめとする6つの交響曲や、ピアノ協奏曲が次々と発表されています。とくに1806年~08年は、『傑作の森』(ロマン・ロランの表現による)と呼ばれる時期です。

今回のヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61は、まさにその1806年に作曲されました。ベートーヴェンが作曲した唯一の「完成した」ヴァイオリン協奏曲です。

 同時期の作品である交響曲第4番やピアノ協奏曲第4番にも通ずる叙情豊かな作品で幸福感に包まれるような音楽ですが、これには彼の真剣な恋(ついに結婚には至らなかったのですが…)の精神的な充実感も影響しているとも言われています。

 メンデルスゾーン、ブラームスの作品とともに、‹三大ヴァイオリン協奏曲›とも呼ばれる傑作です。

 今回のソリストは、ベルギー在住の世界的ヴァイオリニストである堀米ゆず子さん。ベテランといってもいい堀米さんだからこそ、べートーヴェンの重厚な音楽を受け止めて、オーケストラと対峙して(舞台の上でたった1人でオーケストラと張り合うソリストさんってスゴイ!ですよね)豊かで素晴らしい音色を響かせてくださることでしょう。


2曲目は、プロコフェイフ作曲のバレエ音楽《ロメオとジュリエット》 ラザレフ版 です。

 作曲したプロコフェイフは、1891年 帝政ロシアの時代に現在のウクライナ地方で生をうけ、早くから音楽家として活躍しました。1917年ロシアが革命の嵐に包まれる中で祖国を離れることを考え始め、27歳の時にアメリカへ亡命することを決意してシベリア鉄道にてモスクワを発ちます。当時の船便の都合で 6月に日本の駿河港に上陸し、8月初めまでの間に、東京・京都・大阪・奈良・軽井沢など各地を訪れました。このプロコフェイフの日本滞在は、西欧の大作曲家の最初の日本訪問であり、音楽評論家らとの交流もあり、日本の音楽界に少なからず影響を与えたとされています。8月2日に離日し、サンフランシスコに上陸後9月にはニューヨークへ到着しました。その後、32歳の頃にはフランスを拠点として活動しましたが、次第に祖国を離れていることに耐えられなくなり、さまざまな芸術的制約を受けることを覚悟のうえで42歳になってロシアに帰国しました。

 

 帰国してすぐ、レニングラードの劇場から新作バレエ音楽を依頼され、シェークスピアの戯曲《ロメオとジュリエット》を選んで作曲を開始しています。作品はきらびやかで華やかなバレエの舞台とともに評判となり、プロコフェイフは祖国で新たなスタートをきりました。その後、第2次世界大戦の時代を経て1953年に亡くなりました。

 「ラザレフ版」というのは、バレエの舞台に合わせて作られた組曲の中から、ラザレフがオーケストラ公演向けに曲を抜粋し、組み立てなおしたものをさします。

 現在ロシアを代表する指揮者であるアレクサンドル・ラザレフ。彼がボリショイ劇場の黄金時代を築いた経験をいかして、並々ならぬこだわりと厳格さで曲を選定しているのが今回のプログラムです。首席指揮者として何年間にもわたって培ってきた日本フィルとの信頼関係を存分に発揮し、強烈な斬新さ、保守的な古典性などさまざまな表情を見せるプロコフェイフの曲調を個性的なタッチで色鮮やかに描き出していきます。

 音楽は人が奏でるもの。プロの演奏家たちが奏でる生の音楽のエネルギーと感動はなにものにも代えがたいものです。大牟田に音楽が溢れるひと時準備して、たくさんのお客様をお待ちしています。


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